ショッピング枠現金化、サンモリッツにて
2009 年 7 月 6 日 月曜日その日僕はスイスの有名な観光地サンモリッツに降り立った。
3ヶ月にも渡る人生最大の旅行のちょうど中間だった。
30歳を過ぎて一身上の都合で会社を辞めた。
新たに就職活動を始めなければならないがその時ふとある考えが頭をよぎった。
「これはチャンスかも知れない、一旦再就職したらまとまった休暇は取れなくなる。
世界を見て回るなら今しかない。ヨーロッパを観光ビザの許す3ヶ月間全てを使ってくまなく見て回ろう。
」パリから始まった大旅行も1月半が経っていた。
3日前からはスイスに入り、今、氷河列車に乗ってサンモリッツに着いたのだ。
駅のすぐそばのこじんまりとしたホテルにチェックインする。
6月中旬だからオフシーズンではないがロビーに入ると感じた静けさ、
清潔感。ヨーロッパでもスイスは独特の雰囲気がある。
あふれる自然の中にありながら整然とし、全てが安定し、
調和していた。フロントの男も自然体だが丁寧で親切だった。
さすがに世界一のリゾート地と呼ばれるだけのことはある。
チェックインを終え安堵した私はワインを注文した。
男が聞いた。「ホットかそのままか?」一瞬何を聞かれたのかわからなかった。
ワインをホットで飲むなどということをついぞ知らなかったのだ。
興味がわいてホットを注文した。握り手の付いたグラスにやや熱燗程度に温められたワインを受け取り部屋へ向かった。
「お客様!」男が呼び止めた。「ショッピング枠 現金化をお忘れですよ」フロントに隣接したバーのカウンターにうっかりショッピング枠現金化を置き忘れたのだった。
重いバックパックとグラスの温かいワイン、
そしてうっかり忘れかけたショッピング枠 現金化。
部屋へと至るその途中ここサンモリッツでの滞在は間違いなく印象的なものになるとなぜかすでに確信していた。